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トレーナーという仕事
- アスレティックトレーナー
こんにちは 妻木です
Jリーグ開幕のころ 26年前のお話です
ドイツ代表のリトバルスキーに次いで、ジェフユナイテッド千葉に、
ユーゴスラビアからマスロバル選手が入団しました
レフティで正確なクロスのロングパスと
するどいミドルシュートが持ち味でした
監督とリトバルスキーが対立してしまい、
状況がよくないので、中盤の選手をとったのです
彼は、繊細で寡黙な選手でした
私は、当時チーフトレーナーでした
対応するときは、いつも緊張しました
なぜか私に注文をつけるのです
たとえば、
「ステーキにいつも味がついている
塩コショウのみで食べたい」
日本の肉料理はたいてい味をつけています
彼のために、ホテルに交渉しました
ある時は
「ワイフが腰痛なので見てほしい」
マッサージをしてあげたら、
よけい痛くなった と笑われました
近寄ってくると、また何か言われるかなとドキドキしました
リーグ戦の試合前、控室ではマッサージ、テーピングをする選手が
いつも5~6人いました
私は、頼まれた順にやっていました
選手は、私に 「次お願いします」 と言って待ちます
マスロバルは、いつも黙って待っています
そして、私の手が空くと頼むのです
だから、いつも最後のほうになってしまいます
何試合目のことでしょうか
蒸し暑い日のことでした
マスロバルがイライラして怒ったようにいったのです
「なぜいつも最後なんだ!
サブの選手が私より先にテーピングしているなんて」
私は、「外人選手も日本人選手も平等に対応しよう」
と意識していました
「それは、ちがう
先発は先に、サブは後でしょう 」
と指摘されたのです
むしろ、
「その時の状況で、順番はトレーナーが決めろ」
と考えました
救急医療の世界でもトリアージ といって
救急度に応じて優先順位をつけますね
おなじことです
患者のいう順ではなく、医療者が順を決める、、、、、
平等ではなく、公平にする、、、、、
マスロバルは、本質を突くのです
が、私には、文句を言う気難しい選手に見えました
そして、5年余り過ぎた夏でした
練習前 彼に呼ばれたのです
英語でこんなことを言われました
「今年で契約が終了だ
気に入るかどうかわからないが、
時計をプレゼントしたい
これをつけた時、思い出してくれ」
私は、正直 驚きました
感謝してくれていたとは!
時計は、ゴールドのオメガでした、、、、、
トレーナー泣かせの選手でしたが、
彼は、価値ある気づきを与えてくれました
いま、スロベニアでジェフという喫茶店を開いています
トレーナーという仕事は、
スポーツに関わる仕事ではなく、
人間に関わる仕事なのです
それでは、また
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