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ワタナベ君

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妻木です。

大きな地震がありました。
3月11日(金)は、私も学校で治療中でした。
幸いケガなどなかったのですが、みなさんもご存知の通り電車がストップ。その日は学校に泊まりました。

さてあの地震の直後、私に1通のメールが来ました。送り主は昨年卒業したワタナベ君。地震を心配しくれてのメールでした。
今回は彼のお話をしましょう。

10数年前、私はジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド市原・千葉)のトレーナーをしていました。
ある日、高校生の団体が練習を見学に来ました。私たちトレーナーの仕事に興味を持ってくれたようで、
約2時間、高校生たちは見学して帰りました。

それから何ヶ月か過ぎ、私に1通の手紙が来ました。見学に来た高校生の1人が、イギリスの大学に留学したというのです。
その手紙には海外で語学を学んでいること、将来は世界で活躍できるトレーナーを目指していることなどが書かれていました。

しばらく年月が経ち、私はジェフを辞めてTMSに勤めるようになりました。
2006年、スコットランドでの「世界鍼灸師学会」に参加することになりました。
そこで1つ問題が発生します。通訳が必要になったのです。
多少の英語ならまだしも、学会で発表するほどの語学力はありません。

どうしようか考えたとき、ふとイギリスに留学した彼のことを思い出しました。
ためしに連絡を取ってみると、運よく日程も合ったのです。
心強い通訳も見つかり、私も無事に学会発表を終えることができました。

さて、それからまた時が経ちます。今度はイギリスの彼のほうから、私の方に連絡が入りました。
「鍼灸の資格を取りたい」というのです。
スコットランドの学会で私は鍼灸の実演もしました。どうやらそのときに鍼灸治療に興味を持ってくれたようです。

自分の分野に興味を持ってもらうのは嬉しいものです。
私はさっそくTMSの鍼灸師科を紹介し、彼は夜間に入学することになりました。

もうお分かりかと思います。その彼こそが、今回メールをくれた卒業生、ワタナベ君です。

在学中のワタナベ君は、ワーク&スタディ制度を利用して現場での力を身に付けました。
またASCにも積極的に参加し、私も何度か指導する機会がありました。
海外からのゲストが来たときには、ここでも彼の力を借りました。
ワールドカップでともに働いた仲間が来校した際も、彼の通訳で在校生向けの講演が実現できました。

  

さて、無事に鍼灸の国家試験にも合格したワタナベ君。1年間の治療院経験を経て、この春、彼は再びイギリスへ旅立ちました。
かねてからの夢であった「国際舞台で活躍するトレーナー」に近づくため、イギリスの治療院に就職したのです。

少し長くなりましたが、もう1度彼との出会いを振り返ってみましょう。

はじめはたった2時間の練習見学でした。

普通ならそこで終わってしまいます。しかし、私とワタナベくんの関係は、その後も何年かおきにつながっていきます。

これを「縁」と考える人は多いと思います。しかし本当に単なる縁なのでしょうか。

私とワタナベくんの縁をつなげたもの。それはまさしく、彼の「志」なのです。

高校生の頃から抱いていた夢を、彼は決して見失いませんでした。
そしてその結果、時が経っても人のつながりは切れませんでした。

ワタナベ君とはきっとまた一緒に仕事をする機会があると思います。そのときを楽しみにしておきましょう。

妻木 充法